- 業界こんなもんだラップ / いとうせいこう
- 東京ブロンクス / いとうせいこう&TINNIE PUNX
- NASU-KYURI / President BPM
- 出戻り魔女 / 畑中葉子
- 咲坂と桃内のごきげんいかが1・2・3 / スネークマン・ショー
昭和に発売されたラップとヒップホップの曲を集めてみた
業界こんなもんだラップ
作詞:いとうせいこう / 作曲:ヤン富田
私はみうらじゅんさんが好きなのですが、いとうさんといえばROCK’N ROLL SLIDERSにおけるみうらさんへの的確なツッコミ担当という認識。
何かしらの文化人なんだろうなという、ぼんやりしたイメージで何をしている人か説明ができずにいましたが(みうらじゅんさんも何をしている人かうまく説明できませんが)、まさかの日本のラップ、ヒップホップのパイオニア的存在の人だとは思いませんでした。
この曲は、そんないとうせいこうさんが初めてプロデュースを手掛けたアルバム「業界くん物語」に収録されている曲で、80年代によく言われていた「ファッション業界」や「テレビ業界」、「広告業界」「出版業界」など華々しいいわゆる「業界」をラップで批評するという、日本初の本格的ヒップホップの曲と言われています。
いとうせいこうさんいわく、85年当時にスクラッチ(レコードをこすってチュクチュク鳴らすやつ)ができるのが5人くらいしかいなかったのだそうですが、その中の3人である藤原ヒロシ(Hiroshi The Ripper)さんとZulu King(工藤昌之)さんとDub Master Xさんが曲中でスクラッチバトルをしたり、いとうせいこうさんがヒューマン・ビートボックスをしたりと、考えられるすべてのアプローチを取り入れたというすごい曲になっています。
日本に本格的なヒップホップを誕生させたその手探り感を感じつつ聴くのもいいですね。
東京ブロンクス
作詞:いとうせいこう・押切伸一 / 作曲:ヤン富田
続いては、「いとうせいこう&TINNIE PUNX」名義で発売されたアルバム「建設的」から、東京ブロンクス。TINNIE PUNXSとは、クラブDJとして活動していた藤原ヒロシさんと、ロックバンドの東京ブラボーで活動していた高木完さんで結成されたヒップホップグループで、このアルバムがデビューアルバムになります。
後の、日本のラッパーやヒップホップアーティストに多大な影響を与えたというこのアルバム。なかでもこの東京ブロンクスは、日本のヒップホップのアンセムとして称えられているそうです。
東京をニューヨークのサウス・ブロンクスに見立てて、朝起きたら東京がなくなっていて、何故か一人生き残っていたという曲ですが、なくなった東京をデカいダンスホールに例えて踊って死ねたら気持ちいいなんて、かなりドラマティックな展開で歌詞もカッコいいです。
NASU-KYURI
作詞・作曲・編曲:TIKADAHARO
続いては、音楽のすべてのジャンルを手掛けているのではないかと思われる、音楽性の塊。近田春夫さんがPresident BPM名義で発売したシングル「NASU-KYURI」。近田さんもいとうせいこうさんと同様、同時代に日本語ヒップホップのパイオニアとして活躍されていました。
近田さんは、1986年Run-D.M.C.「Walk This Way」のヒットに触発されて、ヒップホップ専門のレーベル「BPM」を立ち上げます。このシングルはそのBPMから発売されて、B面には先ほどのTINNIE PUNXの「I Luv Got The Groove」が収録されています。
初心者からすると、これまではラップは全部同じに聴こえると思っていたのですが、聴き比べるといとうさんとは違ったカッコよさ!ラップはMCによって結構変わるものだなと気づかされました(よく考えたら当たり前ですね)。
それにしても、近田さんはすべてのジャンルで素晴らしい曲を作られていて凄いです。
出戻り魔女
作詞:宮本純郎 / 作曲・編曲:米光亮
ここからはちょっと変わり種。「カナダからの手紙」や「後ろから前から」でおなじみ、畑中葉子さんの4枚目のアルバム「香艶的夜總會(ロマンチック・ナイトクラブ)」からテクノラップな一曲で「出戻り魔女」。
この曲、ご本人もTwitterでおっしゃっている通り、アメリカのバンド「トーキング・ヘッズ」のメンバー内(ベースのティナ・ウェイマスとドラムのクリス・フランツ夫妻)で構成されたニュー・ウェーヴ・ユニット「トム・トム・クラブ」の曲「おしゃべり魔女」のパクリ(カバー?)。
これがまた、歌詞も時事ネタを取り入れたり、ほどよく下品だったりして最高です。
咲坂と桃内のごきげんいかが1・2・3
作詞:スネークマンショー / 作曲・編曲:細野晴臣
日本で最初にラップを取り入れた曲としてよく取り上げられる曲として、吉幾三さんの「俺ら東京さ行ぐだ」や、佐野元春さんのアルバム「VISITORS」がありますが、いずれも1984年。この曲は、それより前の1981年に発売された怪曲で、スネークマン・ショーの「咲坂と桃内のごきげんいかが1・2・3」。
スネークマン・ショーは、桑原茂一さんと小林克也さんと伊武雅刀さんによるユニットで、ラジオDJをやったり、コントをやったり、レコードを出したりと幅広く活動をされていました。
ヒヤウィーゴー ユーアンドミー カモン ロックンロー
ユーアンドミー ミーアンドユー レッツ ロックンロー
テクノの音楽が淡々としたこの言葉をより強調していて、いつまでも耳に残る不思議な曲です。音楽の担当は細野晴臣さん。面白いことをやっているクリエーターの元には、面白いことをやっているクリエーターが集まるものなのでしょうか。かなり豪華なメンバーです。
伊武雅刀さんといえば役者のイメージで、テレビドラマ「ねこばん」では、強面と可愛い猫の対比で伊武さんまでもが可愛く見えて、若い人からも「いぶいぶ」として可愛がられていた記憶がありますが、コントあり、歌あり、しゃべりありのクリエーター活動もやられていたんですね。
最後に
今回は、昭和に発売されたラップとヒップホップの曲を集めてみました。
これまで通ってこなかったジャンルでしたが、めちゃくちゃカッコよくて今まで聴かず嫌いだったことに気づきました。もうちょっと深く聴いて、また機会があれば第2弾もやりたいと思います。
それでは、次回もお楽しみに。